第84回新制作展!!
こんにちは!新制作協会事務局です。
早いもので2020年8月から配信を開始させていただいたこのメールマガジンも無事に最終回を迎えることとなりました。
1年間、私達の拙い事務所日記をお読みいただき誠にありがとうございました!
最終回は、去る9月15日(水)から9月26日(日)まで、国立新美術館で開催された第84回新制作展の様子を画像いっぱいでお届けしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
第84回展は、この状況下にもかかわらず予想以上のお客様にご来場をいただくことができました。会場に足をお運びくださったみなさま、また、お越しいただけなくても遠方から応援くださったみなさま、誠にありがとうございました!
会期前半の大雨や、まさかの図録完売御礼など今回も色々な出来事がありました。まずは、展覧会初日を迎える前の準備期間からご紹介させていただきます♪
#8月31日
前回のメルマガは搬入前日のガランとした事務所からお届けさせていただきました。そのころ、美術館では彫刻部代表委員の平田先生が明日からの搬入に備え、美術館で荷受けをしてくださっていました。
カラーボックスや網棚、コピー機や様々な荷物が無事に搬入され、明日を待ちわびています ♪
平田先生、ありがとうございました!!
#9月1日・2日
美術館へ移転と同時に作品の搬入が始まります。9時30分に美術館の搬入口が開くと、駆け足状態で昨日搬入された荷物達のもとへ!
10時から作品が搬入されるので、受付係の先生は30分間で荷ほどきと受付のセッティングをしなければなりません。私達事務員は荷物を運び込み、半日がかりで事務所を構えます。
10時にトラックバースのシャッターがゆっくりと上がると、息をつく暇もないまま、2年越しの想いをのせた作品たちがどんどん運び込まれてきます!
この時、次から次とたくさん絵が入ってくるのを見て、今年は出来た!と涙が出てきたとおっしゃっていた先生がいました。
それぞれの熱い想いを乗せて、準備は着々と進んで行きます。
私達もこの事務所日記に備えて、ばっちり2年越しの搬入風景を激写しようと思っていたのですが、忙しすぎてこの2日間は全く撮影ができませんでした。いつもとは違う、フェイスシールド着用の風景やビニール幕を張った受付などもありました。
後日、先生方より搬入風景の画像をいただきました!
受付には感染拡大防止の対策として搬入者名と連絡先・体温を記入するコーナーが設けられ、床には密を避けるよう一方通行の矢印が貼られています。ビニール幕はいつもお世話になっている谷中田美術さんがご厚意で設置してくださったものです。谷中田さん、いつもありがとうございます。
#9月3日
昨日無事に搬入された作品たちをパチリ。例年はこの日から2日間、超絶ハードな審査が行われますが、今年は絵画部と彫刻部は美術館での審査がないため、ちょっぴり静かな美術館です。絵画部・彫刻部は作品の撮影・陳列会議です。
SD部は審査の為、先生方が集まっています。これから応募者のみなさまへ入落通知を発送します。
トラックバースに向かい、お弁当を黙食する風景もありました。
9月1日の搬入から初日までの2週間で審査、入選者発表、撮影、陳列会議、図録の校正など本当にたくさんのタスクがあります。
私達事務員はずっと美術館にいられますが、先生方は他のさまざまのお仕事をされているので、その合間を縫って全てのタスクをこなします。この期間は全員が常にオーバーワークです。
それでも、陳列の計画や作品の撮影、図録の制作など展覧会の準備に妥協はありません。
#9月7日 入選者発表!
無事に審査と通知を終え、HPへ入選者が発表されました。
私達は出品者・入選者のお名前を報道機関へお知らせします。
地方新聞社などから入選者についての取材などのお問い合わせが入り、事務所はお電話の多い期間になります。今年も熱心な地方新聞社様からいくつかお問い合わせをいただきました!
バックヤードでは作品たちが陳列日を待っています。
無事に初日を迎えられますように・・・。
#9月10日
しばらく肌寒い日が続きましたが、お天気も回復し少し秋の気配を感じる陽射しに気持ちが明るくなります。
#9月11日
今日は選外搬出と彫刻部会員の搬入日です。
今回、選外搬出があるのはSD部のみです。作品を搬出に来た学生さんへSD部の先生がアドバイスをしています。来年は入選しますように!
作品を搬入する原田先生を発見!!
ゆうに2mを超える大きな樟の作品がユニック車のクレーンでゆっくりと吊り上げられていきます。彫刻は大きく重い作品が多いので、特殊なトラックをレンタルしたり、遠距離を移動するだけでも大変です。天候にも左右されてしまうので作品が完成しても搬入・陳列するまで安心が出来ません。
#9月12日
事務所では毎日扇風機くんが大活躍です。こちらの扇風機は、人見先生が昨日までアトリエでご使用されていたものを、私達の為に持ってきてくださいました。いつも周囲へ優しい心配りをしてくださる人見先生です。木くずを纏い良い香りを放ちながらフル稼働して9月中私達を守ってくれました。先生、ありがとうございました!
そして明後日は陳列日です。
ここでまた、事務所移動の為荷造りをします。明日1日のお休みを経て、明後日からは地上階へ!お弁当の時に使う除菌シートも積みました ♪
#9月14日
いよいよ今日は作品の陳列です。
ここまで、展示を素晴らしいものにするために入念な準備を重ねてきました。
早朝から、陳列委員の先生方・アルバイトのみなさん、谷中田美術のみなさんが集まっています。丁寧に作品を運び込み、調整をしていきます。
陳列が終わると、授賞会議です。
審査は密を避けるため美術館で実施できませんでしたが、展示室の広さがあれば会員が集まっても大丈夫。授賞会議を実施できます。
ただ、絵画部は例年より作品数が多い上に係の人数を減らしているので、これまで通りに陳列が終わりません。授賞会議はいつもより1日遅く初日に実施することなりました。
私達も2階の事務所のセッティングをし、終わったのは20時ごろ。彫刻部、SD部は無事に授賞者が決まりました!あたりはもう真っ暗です。
ポスターも無事に掲示されました!
#9月15日 初日!
第84回展の初日は13時に開場です。
彫刻部とSD部は展示室で授賞式を開催するため、準備に余念がありません。
今年の賞牌は絵画部の金森宰司先生のリトグラフです。
絵画部は初日の開幕直前、午前中のうちに先生方が会場を周り投票をします。
授賞会議の会場にはすでに緊張感が漂っていますが手指の消毒を促すイラストに思わず笑顔になります ♪
例年より3時間遅れて第84回新制作展が開幕しました!
例によって写真は撮れませんでしたが彫刻部とSD部の授賞式は滞りなく執り行われました。授賞者のみなさま、おめでとうございます!
初日は毎年一番忙しく、あまり記憶がないのですが授賞会議が終わり美術館を出たのは20時頃でした。
#9月16日
今日は1日遅れて絵画部の授賞式です。
ここまできて、やっと展覧会を開催できたんだという実感が湧いてきます。
2年越しの新制作展です。
ワクチン接種会場の案内板とポスターが並ぶことはもうないはずです。
絵画部展示室
絵画の展示室には500点以上の作品が整然と並びます。中には二段掛けになっている作品もありました。海外の出品者の方から、どうして自分の作品が二段掛けになっているのか、それが嫌だという率直なご意見もいただきました。でもそれは、この誰もが辛い時期に展覧会を開催する為、覚悟をして挑んだことの1つであり、本来それを一番したくないのは先生方のはずです。それでも何とか発表の場を分かち合い例年より素晴らしい展示にするため、この展覧会、この展示室の最善を目指して真摯に取り組む姿勢を私達はいつも感じています。
彫刻部展示室
いつもより少しゆったりした空間。贅沢に鑑賞をできる反面、大切な人の不在を想う気持ちもありました。朝夕、豊かに表情を変える野外。途中、作品が壊れてしまうという残念で申し訳ない出来事もありましたが、なんとか展示することができました。閉館後、遅い時間に作品を迎え入れ、レイアウトの調整を繰り返す先生の姿をお見かけし、展示への大切な思いを感じました。
SD部展示室
入り口ではライネケ狐とカンガエルくんがお出迎えしてくれました。
“ 直線は火花の如く未来に飛躍する ”
キャプションについて、どうしても意味が知りたいと熱心なお問い合わせもいただきました。
また、SD部では83回展を上回り100名を超える応募者がありました。3月に開催した「ちょっと小さなスペースデザイン展」ではサイズの縛りがありましたが、本展ではここぞとばかりの大作が自由に空間を行き来し、2年の空白を一瞬で巻き返してしまうようです。
改めて全ての展示室をまわると、この延期期間中の出来事が頭をよぎり、1人1人の先生の作品とリンクします。1点1点の作品から伝わってくる想いやエネルギーに、なんて素晴らしい作品ばかりなんだろう、次も次もその次も、歩みを進めるほどにじわじわと胸に迫り涙が出てきます。
事務所にいると外部の方が、新制作展は展示が良いとおっしゃっているのを耳にします。素晴らしい作品が多いということかな、とその意味はあまり考えたことがありませんでした。けれど、何年もこの場所で働いていてようやくその意味が少しわかるようになりました。一つずつの作品の個性や魅力を活かせる場所、向かい合い、隣り合う作品とのバランスや相性。展示室に漂う上品さ。同じ先生の作品でも、作品が目に入ってくる順番によってインパクトや見えてくる部分が変わり、“ うわっ!すごい ” と毎回驚きがあります。様々な作家が存在する、会の厚みや充実感が会場から溢れだします。1つの展示室だけでもそうなのに、それが3部門にわたり何十室にもおよびます。
#9月24日
9月の初旬に比べると同じ時間でも日が暮れるのが早くなっています。
もうこんなに暗いね、と言いながら帰る道。
会期も残すところあと2日。
#9月26日
最終日17時58分。ギリギリまで熱心に動画を見てくださるお客様もいらっしゃいました。
扉も半分は閉じて、もう数分で第84回展も終わりです。
こうして色々な環境で活動する作家の様々なジャンルの作品を一度に見られる展覧会って公募展の他にあるかな・・
一年に一度たった2週間の展示の為に全力を尽くせる、こんなに贅沢な展示は他にないかもしれません。
途中、終了時間を過ぎてから展示の修正や、作品の修復などもありましたが、心配していたクラスターや感染者が発生することもなく無事に84回展は幕を閉じました。
#9月27日
無事に会期を終え、あとは撤去と搬出です。
終わってしまうさみしい気持ちに浸りながら、注文を受けた図録を梱包していると・・あれ?
図録の山が、いち、に、さん・・
これから送る分が、いち、に、さん・・
ん?
いち、に、さん・・
足りない?まさか!
私『図録付招待状の集計って終わりましたか?』
くわ『今、でましたよ!何冊だと思います?』
私『△△冊くらいですかねー」
くわ『う~ん、〇〇冊です!(ほんのりドヤ顔)』
私『えっ!』
くわ『どうかしましたか?』
慌てて全ての図録使用数を計算します。
私『それ、83回展より多いです。図録、完売したかもしれません。てか、足りないかも・・』
くわ『ええっ!?』
実は今回は開催できるか直前までわからない部分があったので、図録の発注数を減らしていたのです。
それなのに、前回より出てるということは・・
まさかの完売御礼!?
でも、まだ発送は終わっていません。
慌てて、図録委員会チーフへご報告。
図録の制作をお願いしている横浜プリント様にご尽力いただき、なんとか数十冊在庫が確保できました。
横浜プリントさんは、図録委員会と二人三脚で、巻頭言、追悼ページ、会員名簿、目録など全ての制作に何か月も前からお付き合いくださり、さらには9月の初旬に撮影した作品をわずか10日程度で図録に製本するというとてもハードな作業を引き受けてくださっています。横浜プリントさんがいらっしゃらなければ、初日に図録は完成していません。いつも本当にありがとうございます!
最後にそんなハプニングもありつつ、なんとか84回展も終了です。
#9月29日 搬出2日目!
私達も明日は新宿に戻ります。
次は京都の巡回展へ!
谷中田さんのトラックが荷物を乗せて帰ります。
バックヤードも店じまい。
ありがとう、毎日通ったバックヤードも大好きだよ!
ありがとう、この坂道もポストに向かって何度も走りました!
また来年、きっと来るからね!
公募展がすでに終わったコンテンツだと言う人もいます。でも私達の目の前にはいつも、他の誰かの意見や一般論ではなく、自分にとって価値があるものの為に無償で動く情熱を持った先生達がいます。この場所は私達にとっていつも学びに溢れ、喜びと誇りを持って働ける場所です。決して何も終わってはいません。
来年は第85回展です!
86回展も87回展も新制作展は続きます。私達も次の目標に向かって、まずは事務所の片付けから・・。
みなさま、最終回までお付き合いいただき本当にありがとうございました!
この1年間、とっても楽しかったです。
またお目にかかれる日まで、どうかどうかお元気でお過ごしください。
そしてこれからも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
事務局 峠・桑久保