8月31日!【搬入前夜】
こんにちは。新制作協会事務局です。
いよいよ8月も最終日、明日から第84回新制作展の搬入が始まります!
先ほど、美術館への引っ越し荷造りを終えました。今、がらんとした事務所から配信させていただいています。
昨年の延期から2年越しでの新制作展が、まもなく開催です。
第84回展は、様々な制限がある中での展覧会となり、またこの状況下で展覧会を開催するということについても色々な考え方があると思います。
この1年半、新制作協会が本物を展示することの意義を追求し続けたこと、あらゆる制限の中で捨てたこと・捨てられなかったこと、目の前を過ぎていったたくさんのこと、それを想うと私たち事務員としても何とか無事に開催できますようにと祈るような気持ちでいます。
そして、たとえ途中で断念することになったとしても開催に向けて心を砕いた毎日は、大きな糧になると信じています。
自分の身だけではなく “ 本物を展示すること、そして本物を観ること ” を守るために、おしゃべりしない、マスク・手袋着用、句読点のように繰り返す手指消毒、人数制限、緊急連絡網、出来る限りフル装備での感染防止対策で私達も準備にかかります。
そして、楽しむ準備もできました!
みなさまも、ご準備はよろしいでしょうか。
2020年の4月に展覧会の延期が決まってから、来年こそはと、本当に色々な工夫を凝らし、今までしたことのない方法や手段で準備をしてきました。
今回は、この1年半を少し振り返ってみたいと思います。
まず、絵画部、彫刻部、SD部、それぞれの作品の性質からも展覧会を開催する為に立ちはだかる問題が変わってきました。
1つ目の課題は密を避けること。
会員数と出品者が一番多い絵画部では、まず審査のために会員が集まれない、という問題が発生しました。
新制作展の大きな特徴の1つとして、審査の公平さと透明性を保つことは絶対です。会員1人1人が作家の名前も明かされない作品だけを目の前に、大切な1票を投じます。
誰に相談することもなく、じっと作品を見つめる先生たちの真剣なまなざしを前に審査中のお部屋には私達も入室をためらいます。時々挟まれる休憩では、疲れた様子の先生方が、飴やコーヒーを求めて事務所にいらっしゃることがよくあります。丸2日間ほど缶詰の審査は年配の先生方には命にかかわるのではないかと思う程です。
それなのに今回は感染対策のために、美術館の審査室に入れる人数がとても少なくなってしまったのです。
審査の方法を変えることはできない、でも人も集まることが出来ない。絵画部が出した答えは、“ 審査をしないこと ” でした。
今年、絵画部は無審査になりそうだよ、と初めて耳にしたときには驚きとともに胸が熱くなりました。先生方は審査をすることよりも、とにかく展覧会を開催することを選んだんだと思うと、バーチャルで楽しめることが増えている今、作品を肉眼で観ること、実体のある作品の持つ力を信じていいんだと本当に嬉しくなりました。
審査をする人間を減らすこともできたはずです。でもそれを選択しないことが創立会員から受け継がれている心なのだと思いました。
きっとこの選択はたくさんの出品者のみなさまに勇気を届けてくれるはずです。
また、彫刻部とSD部では搬入と陳列の問題があります。
立体の作品を扱うにはどうしても搬入時に人出が必要になり、密が避けられません。審査をするよりも以前に搬入時の人数を減らさなければならないのです。
そこで、彫刻部はデータ審査を導入しました。
昨年のWEB展開催は、「彫刻作品は目で見て、匂いをかぎ、触って感触を確かめ五感をフルに使うものだから、今回のWEB展覧会は全く別のものである」という前提で開催をされていました。
そのためオンラインでの審査は苦渋の決断だったと思います。
そしてその後に続く “ 応募料は無し ” という一文を見て絶句しました。いつもより手間も時間もコストもかかる審査なのに無料!?
やはり、従来の審査ではないこの審査方法で応募料は取れないというご判断だったのか、そのくらい五感全てを使うことを大切にしているのです。
この方法で審査をすれば、搬入は入選作品のみになるので密が避けられます。
それでも発表の場を分かち合うことを諦めない姿勢に、涙が出そうになりました。
SD部は、作品がデリケートで複雑なため、作品ではなく会員が移動して審査をします。
そのためお部屋の大きさと先生方の人数のバランスはなんとかとれそうです。
そこでほぼ通常通りの審査が可能だということになったのですが、感染者拡大中の東京への上京が難しい先生方のため、オンラインで遠方の会員からも票を集計する方法を模索しました。
また、構造や素材が複雑な作品を扱うために密が避けられなくなってしまうので、いつもの搬入業者さんとの打ち合わせで、バックヤードの使い方など情報を収集したり、細かい工夫を凝らしました。
限りなくいつも通りに近い方法を実施するために、いつもとは違う努力と労力を惜しまず続けました。
仕事があり、日常生活があり、制作があり、新制作の係の仕事を入れるともうオーバーワークです。さらに今年のイレギュラーなことに対する対応が重なり、それはもう忙殺の勢いです。日付が変わってから届いていたメールや、移動中の電話、20時からの会議、それでもなんとか展覧会を開催したいと思う気持ち。
もし今、猪熊先生がいらっしゃったら、なんておっしゃるだろう・・・。
新制作50年史の大好きなあの巻頭言が頭に浮かびます。
うれしい友よ!!
強いうれしい友よ!!
この展覧会は、すべての表現者へのエールでもある、と感じています。
新制作50年史 巻頭言
♪2020年~ イベント一覧♪
2020年
4月 緊急事態宣言5/6まで 5/31までに延長本展の延期決定
8月 新制作協会メールマガジン・SD通信 配信開始
9月 絵画部WEB展覧会・オープニング懇親会では会員6名によるアーティストトーク「私が影響を受けた作家たち」が開催されました。
10月 彫刻部WEB展覧会
10月 絵画部レクチャー
荒井茂雄 × 木嶋正吾(新制作協会絵画部会員)による対談「新制作と共に歩み」・授賞式
11月 絵画部ギャラリートーク / 個展訪問動画の開始
作品:鈴木幸子(絵画部会員)/ 作品:小島隆三(絵画部会員)
絵画部個展訪問動画も気が付けば16件も配信していました!
12月 彫刻部講評会
彫刻部では会員とWEB展出品者が集まり、オンライン講評会も実施しました。
2021年
2月 彫刻部小作品展
2月 SD部ちょっと小さなスペースデザイン展
そしていよいよ・・・
2021年9月 本展です!
この状況下だったからこそ経験できたイベントや感じられたことがたくさんありました!私達もメールマガジンで事務局の日常を記事にするという機会があったからこその発見や学びをたくさんいただくことが出来ました。貴重な経験を本当にありがとうございました。
来月はいよいよ最終回となります。事務局目線での本展の色々な舞台裏を可能な範囲でお届けできたらと思います。
それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
明日からは美術館におります!どうぞよろしくお願い申し上げます。
そして、どうかどうかお気をつけてお過ごしくださいませ。
事務局 峠・桑久保