《 SD部座談会 - 後編! 》
こんにちは、新制作協会事務局です。
来月、3月8日からはスペースデザイン部の「ちょっと小さなスペースデザイン展」がはじまります。
そこで、今回は年末にご紹介したSD部座談会の後編をご紹介させていただきたいと思います。
前編では、建築部の創設からスペースデザイン部の生い立ちについてのお話、そして先生方の初出品のお話を盛りだくさんでお届けいたしましたが、後編もびっくりするようなエピソードやこれからの活動についてなどを楽しくお届けさせていただきたいと思います。
「SD部座談会 - 前編!」はこちら
まずは現在のSD部について、どんな活動をされている先生がいらっしゃるのか、またSD部ならではの審査や展示の難しさなどをうかがってみました!
現在のスペースデザイン部の活動、メンバーについて
― SD部は作品のジャンルも立体や染色・テキスタイルがあり、立体の中でも暗室を使うものがあったり日時計などの野外展示があったり、先生方の活動も様々かと思いますが、実際にはどんな活動をしている先生がいらっしゃるのでしょうか。(以下、会話形式の部分は敬称略)
金子:お互いに展覧会、個展、グループ展の活動は表立って知っていますが、日々の生業という意味での活動(お仕事)としては、SD部も他の部同様に教育機関(大学、専門学校、高校、中学)などに携わっている方が比較的多いと思います。
専任教員でも教育の現場だけでなくデザインの現場のお仕事に関わっている方も多いと思います。色々なところから個人的に仕事の依頼を受けたり..。他に建築家、インテリアデザイナー、照明デザイナー、テキスタイルデザイナー、プロダクトデザイナー、陶芸家、などを専門にされている方もおります。こちらデザイン関係の組織に所属する方、自身で事務所を構えている方色々です。こちらの方々も教育機関に非常勤として関わるケースがとても多いと思います。
― 本当に多種多様ですね!お仕事の内容はどのようなものなのでしょうか。
金子:建築・建設関係は住宅や飲食店の設計施工監理やインテリアコーディネート。テキスタイルの方は住宅やホテルなどの公共施設にタペストリーを制作。陶造形家の藤原さんなどは、公共の建物に陶壁をデザイン製作されています。一般の方では、草月流の華道の先生をされている方もおられました。
リタイアされている方も地域や町おこしのお手伝いをされたり、ワークショップを開催されたり、個展での作品発表以外でも様々な活動をされています。また、SD部では建築学会や建築美術協会などの学術・研究的な組織に所属されている方も見受けられます。長く付き合っている会員の方々のお仕事は何となくは分かるのですが、実はお互い具体的なところまではよくわからなかったりするのではないでしょうか。
その辺りはSD部のメルマガ「SD通信」の機会に色々伺おうと思っています。
―SD通信、いつも楽しみにしています。SD通信Vol.7では、前編でお話いただいた尾埜先生の“使えないテーブル”も拝見できて感激でした!作品の素材も構造も様々、会員の活動の場も様々で、それゆえに審査がすごく難しいのではないかと思うのですが、審査で気を付けていることなどありましたら教えてください。
佐伯:確かに難しいですよね。専門外のものもあるので。そこは、ご勘弁いただいて自分の感性で審査しているけれど、専門家の意見、これはこういう素材を使ってこういう風に難しいことをしています、ということは伺っています。それが効果を出しているかどうかはそれぞれで判断をする。以前は立体とテキスタイルで別々に審査をしていたのですが、途中でやはりそれはおかしいのではないかということになって、一緒に審査をするようになりました。
金子:僕も審査の時にすごくいいなと思っているのは、わからないところはわかる人に聞きに行くんですよ。最終的にはそれぞれの感性で決めるんだけど、対話するのはすごく大事だなと思いました。自分の感性が審査を通して広がるというか。最近時間的なこともあってそういう場面が減ってしまった部分があるので、必要だなと思います。
佐伯:出品点数が増えたんですよね。だから時間的に難しい部分がある。
尾埜:でもほら逆に選外の人の方がどうして選外なんだっていう理由をね、
佐伯:そうそう、それに時間をかけている。
尾埜:あれは素晴らしいことですよね
金子:僕もすごいと思っています。
佐伯:入選した人は会場でいくらでも意見聞けるけど選外の人は聞けないからね。そこは桜井玲子選外担当委員が審査の後、ものすごい取材をして選外搬出の2日間に備えているんですよ。
金子:愛情をもってお話をしていただけるので、それを思うとこちらもどういう風にお伝えしようかどうアドバイスしようかと、会員がそこで熱くなっているのは良いですよね。
ここで杉田先生登場!
金子:杉田さんこんばんは
全員:こんばんは
杉田:すみません。どうぞ続けてください。笑
金子:じゃあ、杉田さんがせっかく来たので事務局から何か質問を。
―では、ちょうど今、SD部の作品に色々なジャンルがあって、審査も展示も難しいのではないかというお話を伺っていたのですが、この時は困ったぞ!など展示が難しかった作品のご記憶、ご自身で展示に失敗してしまったお話などありましたら教えてください。
杉田:え~と、・・・いっぱいありますね!
全員:笑
杉田:自分の作品もそうですけど、一般出品者の方の作品もやはり会場にあった仕様というか作り方をしている方が意外に少なかったりして、それでもテキスタイルの作品とかそういう作品を扱いなれてる会員はその場でササっと糸をはったりテンションかけたりするので、それを横目で見て、ずいぶん勉強した覚えがあります。若い頃、一般出品で出していた頃は展示になると実行部隊で、階段にあがれとか、重いの持ってとか、そういう風に会場構成をしていく中で、どの時点で全体を見渡していくのかっていうことを展示に参加したことで教わったという部分があります。自分の作品についてもっと言うと、強度は無いは、展示している途中で形が変わっちゃうは、あと悪臭を発したのは最悪でしたね(笑)もうね、ファイバーという言葉をはき違えていたのか何かわかんないけど、生のファイバーを使いまして、それが会場で天気の悪い日なんかに湿気を帯びてすごい悪臭を発するわけですよ。
金子:今じゃ展示できないよね。
杉田:考えられない、考えられない。なんであんなことをぐいぐいやろうとしたかっていう、どこを自分で良しとしたのか、今考えると恥ずかしいのだけれど。その時の発想自体は、あって良いと思うけれどそれを具体的に作品として成立させる為の思慮や経験が足りないというかね。
― あの、生のファイバーってどういうことなんでしょうか。
杉田:そこはそのまま流してほしかったんですけど
金子:なんだったんでしたっけ、素材は?
杉田:結局そこ掘るの?
金子:きのこ?
全員:え~!?
杉田:きくらげ。生じゃないよ、一応乾燥させてるんだよ。
全員:えー!!きくらげ??
尾埜:綺麗なきくらげだったよね、白くて。綺麗だった。
杉田:上野のアメ横行って乾物買ってきて、これでなんかできないかなって。妙な発想だったんだよね。
金子:我々の先生にね、素材を開発させられたんですよ。
杉田:見かけに惚れちゃって自分ではすごく好きだったんだけど、あんなに匂いがすると思わなかった。
吉田:今じゃ考えられないね。
金子:今みたいにどこの美術館もそんなに厳しくなかったから。
杉田:会場に水をこぼしたりとか、そういうことぐらいしか文句を言われなかったんだよ。
金子:全然違う展示会で学生の出品で水を使ったら漏電してね。それで次の年からダメになったんですよ。
佐伯:新潟の美術館で蜘蛛が出て国宝がだめになったことがあったでしょう。あれからすごく厳しくなったよね。
― まさかそんなお話がうかがえるとは・・・
杉田:(来たばっかりで)流れがわかんないから、そのまま答えちゃった 笑
金子:大丈夫流れにそってますよ。笑
杉田:一応図録に残ってるんだよね、あれ
― 何回展なんですか?
杉田:それは探してください。こわれちゃったのもあるよね、会場で。
金子:作品を壊されちゃったりというのは僕もあって、SDはみんなで手伝うんですよ展示を。その時、杉田さんに助けてもらったんですけど、私の作品もヤワに作ってはあったんですけど、学生さんで展示を手伝ってくれていた人が落としてしまって、真っ二つに割れてしまったんですよ。樹脂を流したものなんですけど。そうしたら杉田さんが樹脂持ってるんですよ。それで応急処置をしていただいて。
杉田:だから、自分のが壊れやすいからだよ。笑 そういうのは何かしらみんな経験しているよね。
杉田文哉 K3-D・fiber 第57回展図録より
杉田先生から、登場とともにびっくりするようなエピソードをうかがうことができました!そして、過去の図録を片っ端から広げ、生ファイバー作品を見つけましたので大公開です!確かにSD部の作品は、何でできているのか、どうやってくっついているのかなどパッと見では想像がつかないものが多く、色鮮やかで軽やかな作品が本当はとても重いものだったり、頑丈そうに見えるものがとても脆かったり。それも魅力のひとつだと感じます。こちらの作品もまさかきくらげとは、どなたも思わないのではないでしょうか。
そして前編でうかがったグループでの出品作品も発見しました!
山口和加子・吉田淳子 森のメッセージ 第58回展図録より
杉田文哉・金子武志・野口育郎 COMPOSITTION′95 都市の律動 第59回展図録より
また、大きな作品が並ぶ中、「ミニアチュール」もとても親しみやすく、視界に作品の全身が収まるので、それぞれの素材と構造の魅力を十分に感じることができます。ここでミニアチュール部門を設けた経緯をうかがいました。
金子:佐伯さんのアトリエにお邪魔して日高さんと伊藤哲郎さんと一緒に要綱を決めた覚えがあるんですよね。
佐伯:スペースデザイン部って大きくて迫力のある作品が多いのが特徴で、それは素晴らしいことだけれど、逆にそれじゃないと新制作に応募できないのかなってイメージがあった。やはりたくさんの人に応募してもらいたいので、とっかかりになるような部門があればと。まず小さいものから制作して、そこからだんだん大きいものを出品する人が出てきたらいいなって。テキスタイルではミニアチュールってよくあるんだけど、SD部はさらに色々な作品があるので面白いんじゃないかしらって提案してみました。そうしたら、ずっとミニ部門にいてなかなか一般部門に移行しないんですよ。逆に大きい方からミニにいっちゃって、ずっとそのままだったり。そこは思惑が外れちゃったんですけど、あとね、老後用っていうのもあるんですよ。大きいものを作る体力がなくなった時に、テーブルの上で作業ができるからよいでしょう 笑
杉田:SD部はシニア層にやさしいんですよ 笑
金子:ミニアチュール部門と野外展示があって、暗室があって、吊り作品があって、新しい美術館になってから、こちらから働きかけてそういう部門が作れてよかったんじゃないかと思います。上野の美術館も自然光が入って良い場所でしたけど。
杉田:会場を比べると、都美術館から今の美術館に移るときは、箱物っていうイメージをすごく感じて、都美術館は天井の高さの違いや、吹き抜けや外光が入ったり、片側の壁は背が高くて色々バリエーションが作れてそういう魅力があったから。それが今の美術館に移ったら非常に無機的な箱ってことなんだけれども、今の場所に対していろんなアプローチをすることによって今出来ているのは良いし、もっとやれることがあったらどんどん提案していくべきだと思うよね。
第83回新制作展スペースデザイン部会場風景(国立新美術館)
これからのスペースデザイン部の活動
― 公募団体の社会的存在も当時とはずいぶん変化していると思います。今後、公募団体としてどのようにありたいか、またどのようなアプローチをしていくのが良いと思われるでしょうか。スペースデザイン部に出品をお薦めしたい点や理由、またSD部の魅力など教えてください。
野口:素材に関係なく、素材とデザインが行き交っている感じ、私はこう成らなければならないという印象が少なくて。それがすごく息ができるというか自由な、平面とか彫刻とか関係なく動けるのが魅力というか。会場を歩いていると絵画とか彫刻とか関係なく作品が行き来しているように見えて、創立時のお話の垣根を取り払うという考え方はすごく好きです。当初の気持ちにもっと強く立ち返ってもよいんじゃないかと思うくらい、そうすると他と全然違う良さがもっと際立つんじゃないかなと思います。
前田:空間を見てもらって、そこの空間と一緒に作品並べたいって思ってもらえたらどんどん出してほしいですね。やっぱり見てもらえないとわからない部分がたくさんあると思うので、その中でいろんなジャンルを見て自分の作品を展示したいという人がたくさん出てきてくれたらいいなと思います。
金子:新制作協会は3部でやってるんですけど、彫刻や絵画は(ジャンルとして)わかりやすくて、SDはひも解くと多岐にわたっているので、自分の作品のジャンルが彫刻や絵画に当てはまらない人は出してくれたらいいなって思うんですよね。ただ80年以上やっている会だと最新のものじゃない気もするんです。歴史的にオーソドックスにきている造形活動だと思うので、新しいものが来てもよいけど、間口が広い中で1回でも2回でもみていただいて、自分の中でヒットする感覚があったら、今は特別にアートとかデザインとかいう時代でもないと思うので、一般の方にどんどん来てもらいたいなって。老後とか良いキーワードだなと思うし。アカデミックな勉強をしていなくても、幼稚園でも小学生でもできる、そういう部分もあるんじゃないかと思います。
杉田:今日皆さんからいただいた資料を改めて見て、歴史的な経緯で考えると建築部とか改名したころとか、そういうことを考えるともっと建築的な方が参加されてもよいし、違うジャンルの方も呼び込みたいし。大事なのはどうやって展覧会を見てもらうか。会場に来てもらうだけではアピールが少ないのかなって、他にも知らしめる方法はあると思うので、我々としては何か方法を常に考えて発信していかなきゃいかないのかなってそういうことは感じています。
確かに会場に来てもらってってその通りなんですが、違うジャンルの人達とのつきあいみたいなものを、それぞれの関係の中で出会いみたいな中で引っ張り込めるくらいのことができたら最高に楽しんだろうなって最近特に思うようになって。未経験の人でも、何かしら表現体になってそれが面白い形で発信できれば、それはそれでいい作品になりうると思うし、それを手助けしたり一緒に作っていくとか、コラボレーションだと思うんですよね。それも含めて今後はいろんなことが出来ていけるのかなって思っています。専門的に経験した人しか参加できないとかじゃなく、興味を持った人が、それこそ猪熊さんじゃないけど誰かの横に一緒に置いていくとか、そんなことでも良いから面白いことができたら、展覧会自体がもっと楽しくなるんじゃないかなって。そういうことがないと停滞していってしまうのかなと思います。でも今日は改めて資料を読んでみて元気をもらえました。
吉田:私が今思ったのは、さっき話が出ていたように落選した方にまたチャレンジしてもらう、せっかく出していたのに最近作品を出してこない人達がいるよねって、一度落ちても違った方向で作品を作ってもう一度出してもらえるような、もっと続けて出してくださったらいいなって思います。今日、建築部や知らなかったことがうかがえて、私もまた自分で調べてみたいなって思うようになりました。楽しい時間を過ごさせていただきました。
片岡:最近出品者も年齢が上がってきて、やはり若い方たちにもっと出していただきたいなと思います。そのためには、会員の我々が魅力的な良い作品をつくること。以前は大きすぎてどうしようみたいな作品があったけれど、最近は小さくなってしまっているので、こちらもフレキシブルに対応できるような部になると良いなと思います。
佐伯:今年、延期になって新制作展がない1年の虚しさをひしひしと感じました。毎年毎年新しいものを作ることは、自分自身の新陳代謝にもなっているんだなって。作品だけ見たらこの人は何歳かってわからないでしょう?そう見えないような作品を作りたいなと思います。えっ、この人ってそんな歳だったの?っていうような。
尾埜:今から15年くらい前、都美館の時に映像を出してもいいのかとか、そういう事があったけど、音を出しちゃダメだとか制約があって、断った覚えがあるんです。新制作展の場合、展示室で音を出すわけにはいかないかもしれないけど、映像や音も許容できるようなWEB上での活動であったり、そういうことも考えていく必要があるかなと思います。
金子:今日こうして話してみて、今後もう少し会員として知っていなくちゃいけないなということもあったし、今日だけじゃなくSD部の中なのか外向けなのか、セミナーやシンポジウムがあってもいいのかなと、そういうきっかけになった気がします。
この延期期間に、SD部は、展覧会で発表することが新制作の活動の重要な部分だからと、今年はWEB上での企画はしないというスタンスをとりました。その代わり建築会館での企画が、今後に向けて実験的な場になるように考えていて、今、皆さんがお話してくださったようなSD部の魅力のようなものが別の場所でも発揮できたらいいなと改めて思いました。
― 前編・後編でスペースデザイン部について掲載させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。私たちもいつもとは違う視点を持って「ちょっと小さなスペースデザイン展」を楽しめるような気がします。ご自身が制作している作品が、どんなジャンルなのかわからない方はぜひSD部へ!みんなで何かわくわくすることをしたいという思いは、創立会員の先生方も同じだったのかもしれません。今回の座談会もとても楽しく学びに溢れるひとときでした。遅くまでありがとうございました!
そして最後に「ちょっと小さなスペースデザイン展」のお知らせです。
出品作家
<スペースデザイン部会員>30名
雨山智子・五十嵐史帆・五十嵐通代・伊藤順・伊藤哲郎・今村敬子・おおひらよしこ
岡本泰子 ・尾埜行男・加賀谷健至・片岡葉子・金子武志・佐伯和子・桜井玲子・白川隆一
神芳子 ・杉田文哉・高松恵子・谷浩二・中島直美・中野威・二井進・野口育郎・野口真里
藤原郁三・前田亮二・森史夫・山口和加子・吉田淳子・若松美佐子
<スペースデザイン部協友>11名
伊藤清子・大木敦子・大谷美智子・小泉伸子・腰越祐貴・西野芙佐子・馬場拓也・深尾雅子
福島夕貴・正木倫子・横尾まさこ
(以上、あいうえお順 41名)
※ご来場の際にはマスク着用や入り口での手指の消毒等、感染予防対策にご協力を賜りますようお願い申し上げます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
部の主催する企画展示の他にも個展など精力的に個人で活動されている先生もたくさんいらっしゃいますので、ぜひ新制作協会のHPのトップ画面もチェックしていただければと思います。
来月は、「ちょっと小さなスペースデザイン展」の会場風景もお届けする予定です。
まだまだ安心できない日々が続きますが、どうかお気をつけてお過ごしくださいませ。
事務局 峠・桑久保